ー準備ばかりしていた彼が、本当に足りなかったものとはー
「『もっと収入が増えてから』と言い続けた男性」
― 準備ばかりしていた彼が、本当に足りなかったものとは ―
※プライバシー保護のため、一部内容は調整しています。
「今はまだ、結婚する資格がないと思っています」
初めて相談に来られたのは、37歳の翔太さん(仮名)でした。
神戸市内のIT企業に勤務する会社員。
穏やかな話し方で、礼儀正しく、清潔感もある男性でした。
仕事は真面目に取り組み、同僚からの信頼も厚い。
休日にはジムへ通い、読書も好き。
一人暮らしの部屋も整理整頓されているそうです。
プロフィールだけを見れば、
「なぜ今まで結婚していないのだろう。」
そう思われても不思議ではない方でした。
ところが、面談が始まってすぐ、彼はこう言いました。
「先生。」(時々、私は先生と呼ばれています)
「僕は結婚したい気持ちはあります。」
「でも……。」
少し言葉を選びながら続けました。
「今の収入では、まだ結婚する資格がないと思うんです。」
「あと100万円増えたら」
年収は約520万円。
決して低いわけではありません。
生活にも困っていません。
貯蓄も計画的に続けています。
私は率直に尋ねました。
「では、年収がいくらになれば結婚しようと思えますか?」
彼は少し考えて答えました。
「600万円くらいでしょうか。」
「そのくらいあれば安心かな、と。」
私はさらに聞きました。
「600万円になったら、本当に不安はなくなりますか?」
彼は少し黙りました。
「……たぶん。」
その「たぶん」が、とても印象に残りました。
実は三年前も同じことを考えていた
話を進めていくと、こんな事実が分かりました。
34歳の時。
彼は、
「あと少し昇給したら婚活しよう。」
そう思っていました。
35歳では、
「主任になったら始めよう。」
36歳では、
「物価も上がっているし、もう少し貯金してから。」
そして37歳。
まだ同じ場所に立っていました。
私は静かに尋ねました。
「もし来年、600万円になったら。」
「その次は、何を条件にしますか?」
翔太さんは苦笑いしました。
「住宅資金でしょうか。」
「その次は?」
「子どもの教育費かもしれません。」
気づけば二人とも笑っていました。
でも、その笑いの中には、大切な気づきがありました。
準備が終わる日は来ない
私は白紙に一本の線を引きました。
その左側に、
「今」
右側に、
「安心」
と書きました。
そして聞きました。
「翔太さん。」
「この"安心"って、どこにありますか?」
彼は少し困ったように笑いました。
「分からないです。」
そうなんです。
結婚に必要な「安心」は、
数字では測れません。
もちろん生活は大切です。
収入も大切です。
でも、
『もっと』
という基準だけで考えていると、
その"もっと"は一生終わらないことがあります。
年収600万円になれば700万円が見える。
700万円になれば800万円が気になる。
人の基準は、いつでも少し先へ動いてしまうものです。
本当の理由は別のところにあった
私は少し話題を変えました。
「翔太さん。」
「もし今、年収800万円だったら。」
「自信を持ってプロポーズできますか?」
彼は少し驚いた表情を見せました。
そして、小さく首を横に振りました。
「それでも不安だと思います。」
その一言で、私は確信しました。
問題は収入ではありませんでした。
彼が本当に恐れていたのは、
「家族を幸せにできなかったらどうしよう。」
という責任への不安だったのです。
収入は、その不安を説明するための理由に過ぎませんでした。
でも、そのことに彼自身はまだ気づいていませんでした。
そして、この「本当の不安」と向き合うことが、彼の婚活を大きく変えていくことになります。
「収入ではなく、自信が足りなかった」
初回面談から数日後。
翔太さん(仮名)は少し表情を和らげて相談に来られました。
「先生、この前の話をずっと考えていました。」
「『年収800万円でも不安は消えないかもしれない』って言われて、すごく考えたんです。」
私は静かに頷きました。
婚活では、「収入が足りない」「時間がない」「もう少し痩せたら」など、さまざまな理由を耳にします。
もちろん、それらは全く関係ないわけではありません。
でも、多くの場合、その奥には別の感情があります。
翔太さんの場合、それは
「夫としてやっていける自信がない」
という気持ちでした。
「父親の姿」が基準になっていた
少しずつ話を聞いていくと、彼の価値観の原点が見えてきました。
翔太さんのお父様は、自営業でした。
朝早くから夜遅くまで働き、休日もほとんど仕事。
家族旅行も数えるほどしか行けなかったそうです。
それでも家族のために働き続ける姿を、子どもの頃から見てきました。
彼は言いました。
「父はすごかったと思います。」
「家族を養うって、ああいうことなんだと思っていました。」
だから彼の中では、
「一家の大黒柱とは、家族に何不自由ない生活をさせられる人」
という基準が出来上がっていました。
私は聞きました。
「その基準を、奥様になる方も求めていると思いますか?」
翔太さんは少し考えて、
「……分かりません。」
と答えました。
女性が求めていたもの
その頃すでに活動を始めていた翔太さんには、お見合いが決まっていました。
お相手は35歳の由美さん(仮名)。
医療関係のお仕事をされている女性でした。
初めてのお見合いを終えたあと、翔太さんは少し驚いた様子で話しました。
「先生。」
「お金の話なんて、一度も出ませんでした。」
彼は少し笑いながら続けます。
「もっと年収のことを聞かれると思っていたんです。」
実際には、
休日の過ごし方。
好きな食べ物。
家族との思い出。
最近笑った出来事。
そんな何気ない話で二人は盛り上がったそうです。
私は尋ねました。
「由美さんは、どんな方でしたか?」
彼は迷わず答えました。
「一緒にいて、すごく楽しかったです。」
その言葉を聞いて、私は思いました。
彼は初めて、
「条件」ではなく「関係」を見始めていたのです。
一つの会話が価値観を変えた
交際が始まって一か月。
ある日のデートで、将来について話す機会があったそうです。
翔太さんは勇気を出して、自分の不安を打ち明けました。
「もっと収入が増えてから結婚したいって、ずっと思っていたんです。」
すると由美さんは少し驚いた表情を見せました。
そして優しく笑って言いました。
「そうだったんですね。」
少し間を置いて続けます。
「でも私は、一人で生活できていますよ。」
翔太さんは驚きました。
由美さんはさらに話します。
「結婚って、一人で家族を支えることじゃないと思うんです。」
「二人で支え合うことじゃないですか?」
「私も仕事を続けたいと思っていますし、一緒に考えていけたら十分です。」
その言葉を聞いた瞬間、
翔太さんの中で長年抱えていた思い込みが、少しずつほどけていったそうです。
「全部背負わなくていい」
後日の面談で、彼はこう話してくれました。
「先生。」
「僕、ずっと一人で全部背負わないといけないと思っていました。」
「だから結婚する資格がないって思っていたんです。」
私は静かに答えました。
「責任感が強い人ほど、そう考えてしまうんですよ。」
もちろん、家族を支えたいという気持ちは大切です。
でも結婚は、
誰か一人が頑張るものではありません。
仕事で疲れた日には支え合い、
体調を崩したら助け合い、
収入が変われば一緒に考える。
それが夫婦です。
「一人で完璧に養えるようになってから。」
ではなく、
「二人で人生をつくっていこう。」
そう考えられた瞬間から、結婚は現実になります。
婚活が変わり始めた
それからの翔太さんは、不思議なくらい自然体になりました。
以前は、
「もっと昇給してから。」
「もっと貯金してから。」
そう考えていました。
でも今は違います。
「今の自分で向き合ってみよう。」
そう思えるようになったのです。
すると、お見合いでも笑顔が増えました。
交際中も、将来の話を避けなくなりました。
収入を気にしていた頃よりも、
女性との距離がぐっと近づいていったのです。
そして、この変化が二人の未来を大きく動かすことになります。
「結婚は"完成してから"ではなく、一緒に築いていくもの」
交際が始まって四か月。
翔太さん(仮名)は、以前とはまるで違う表情で面談に来られました。
初めてお会いした頃は、
「今の年収では結婚できません。」
「もっと収入が増えてから。」
そう話していた男性とは思えないほど、穏やかな笑顔でした。
私は聞きました。
「最近、何か変わりましたか?」
翔太さんは少し笑って答えました。
「将来を考えることが、不安じゃなくなったんです。」
その言葉が、とても印象に残りました。
「足りないもの」ではなく「今あるもの」を見るようになった
交際が進むにつれ、翔太さんはあることに気づき始めました。
仕事帰りに二人で食事をする時間。
休日にスーパーで夕食の材料を選ぶ時間。
何気ないメッセージのやり取り。
そんな日常の積み重ねが、とても心地よく感じられるようになっていたのです。
ある日、由美さん(仮名)がこんなことを言いました。
「今度、お弁当を持って公園へ行きませんか?」
豪華なレストランではありません。
旅行でもありません。
近くの公園で、お弁当を食べながら散歩をするだけ。
でも、その一日は翔太さんにとって、とても幸せな時間になりました。
帰り道、彼はふと思ったそうです。
「結婚って、こういう毎日の積み重ねなのかもしれない。」
以前は、
「年収が足りない。」
「もっと貯金が必要。」
そんなことばかり考えていました。
でも今は、
「この人と笑って過ごせる毎日。」
その価値のほうが大きく感じられていました。
将来の話を避けなくなった
以前の翔太さんは、
将来の話になると話題を変えていました。
住宅。
子ども。
お金。
結婚生活。
「まだ早い。」
「今は考えられない。」
そう言って避けていたのです。
でも今回は違いました。
「もし子どもができたら。」
「家事はどう分担しようか。」
「お互い仕事は続けたいよね。」
二人は自然に未来を話し合えるようになっていました。
もちろん、すべての答えが出ていたわけではありません。
住宅ローンも。
教育費も。
老後のことも。
まだ分からないことばかりです。
それでも不安ではありませんでした。
なぜなら、
一人で考える未来"ではなく、"二人で考える未来"になっていたからです。
プロポーズの前
交際開始から約六か月。
翔太さんから一本の電話がありました。
「先生。」
「次のデートで、プロポーズしようと思います。」
少し緊張した声でした。
私は尋ねました。
「不安はありますか?」
彼は笑いながら答えました。
「あります。」
「でも昔とは違う不安です。」
「前は、自分に資格があるかどうかばかり考えていました。」
「今は、この人を幸せにしたいという気持ちのほうが大きいです。」
その言葉を聞いたとき、
私は彼の半年間の成長を感じました。
収入が劇的に増えたわけではありません。
年収は活動を始めた頃と、ほとんど変わっていません。
変わったのは、
お金ではなく、結婚に対する考え方でした。
「一緒なら大丈夫」
神戸の海が見える場所で、翔太さんはプロポーズをしたそうです。
「僕はずっと、もっと収入が増えてから結婚しようと思っていました。」
「でも今は違います。」
「完璧になってからではなく、一緒に未来をつくっていきたい。」
「嬉しいことも、不安なことも、一緒に考えていきたい。」
「結婚してください。」
由美さんは少し涙ぐみながら微笑んでくれたそうです。
「はい。」
そして、こんな言葉を返したそうです。
「私も、一緒なら大丈夫だと思っています。」
その一言で、
翔太さんの中にあった長年の不安は、静かに溶けていったそうです。
成婚退会の日
成婚退会の日。
翔太さんは最初の面談で話したことを思い出しながら、笑っていました。
「先生。」
「最初は『もっと収入が増えてから』って、本気で思っていました。」
私は笑いながら答えました。
「覚えています。」
すると彼は続けました。
「でも、あれは収入の問題じゃなかったですね。」
「自分に自信がなかっただけでした。」
少し間を置いて、さらにこう話しました。
「もちろん、お金は大切です。」
「でも、それ以上に大切だったのは、二人で話し合えることでした。」
「困ったら一緒に考えよう。」
そう言ってくれる人がいるだけで、不安はこんなにも小さくなるんですね。」
その表情には、以前のような焦りはありませんでした。
結婚を「責任」とだけ考えていた男性が、
「支え合う人生」として考えられるようになった瞬間でした。
最後に
男性の婚活相談で、とても多い言葉があります。
「もう少し収入が増えてから。」
「もう少し貯金ができたら。」
「もう少し仕事が落ち着いたら。」
もちろん、その気持ちはとてもよく分かります。
大切な人を守りたい。
安心させたい。
その責任感があるからこその言葉です。
でも、結婚生活は、
一人で完成させた人生に誰かを迎え入れることではありません。
二人で悩み、
二人で支え合い、
二人で未来を築いていくものです。
完璧な準備が整う日を待っていたら、その日は永遠に来ないかもしれません。
だからこそ大切なのは、
「今の自分で、一歩踏み出してみること」。
その一歩が、新しい人生の始まりになることがあります。
「あなたの婚活日和」では、
「まだ自信がない。」
「今の自分で結婚していいのだろうか。」
そんな気持ちを抱えている方のご相談も数多くお受けしています。
婚活は、完璧な人が始めるものではありません。
「誰かと人生を歩んでみたい。」
その気持ちがあるなら、それはもう十分なスタートラインです。
あなたが一人で背負い込まなくてもいい未来を、一緒に考えていけたら嬉しく思います。
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「婚活」という言葉に、
少し距離を感じる方も多いと思います。
ここは、
人生やパートナーシップについて
フラットに話せる場所です。
決断の前でも、途中でも構いません。
考えている“今”だからこそ、意味があります。
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