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第5回 物件が決まる前に確認すべきこと

シリーズ「介護事業、このまま進めて本当に大丈夫ですか?」

5回 物件が決まる前に確認すべきこと

 

介護事業の立ち上げ相談をしていると、

 

「良さそうな物件が見つかりました」

 

というお話を聞くことがあります。

 

場所も悪くない。

建物もきれい。

家賃も予算の範囲内。

駐車場もある。

 

不動産会社からは、

 

「問い合わせもあるので、早めに決めた方がいいですよ」

 

と言われている。

 

そうなると、

 

「この物件を逃したくない」

 

という気持ちになるのは当然だと思います。

 

特に、何か月も物件を探していると、

 

「ようやく見つかった」

 

という気持ちも強くなります。

 

しかし、介護事業の立ち上げでは、ここで一度立ち止まって確認してほしいことがあります。

 

それは、

 

「良い物件かどうか」と「この事業に合う物件かどうか」は別の話

 

だということです。

 

私は介護事業の物件を見るとき、建物だけを見ることはありません。

 

その物件で、

 

利用者を集められるのか。

必要な職員を採用できるのか。

収支は成り立つのか。

必要な人員配置ができるのか。

日々の運営に無理がないのか。

 

そして、

 

何年も事業を続けられるのか。

 

そこまで含めて考えます。

 

今回は、介護事業の物件を契約する前に確認しておきたいことについてお話しします。

 

物件から事業を考え始めていませんか?

 

最初に確認したいのは、

 

「物件が先か、事業計画が先か」

 

ということです。

 

介護事業への参入を検討していると、つい物件探しから始めたくなります。

 

インターネットで物件を見る。

 

不動産会社へ相談する。

 

良さそうな建物を内覧する。

 

すると具体的なイメージが湧いてきます。

 

「ここを食堂にしよう」

「ここを事務所にしよう」

「この部屋なら○室取れそうだ」

 

事業が一気に現実的になってきます。

 

これは決して悪いことではありません。

 

ただし、ここで注意したいのは、

 

物件に合わせて事業計画を作り始めてしまうこと

 

です。

 

本来は逆です。

 

どんな利用者を対象にするのか。

どんなサービスを提供するのか。

何人規模で運営するのか。

どのくらいの売上が必要なのか。

どのくらいの人員が必要なのか。

どのエリアなら事業性があるのか。

 

こうした事業の基本を考えたうえで、

 

「その事業を実現できる物件を探す」

 

という順番の方が自然です。

 

物件が先に決まってしまうと、

 

「この物件で何とか事業を成立させるには?」

 

という考え方になりやすくなります。

 

これが後々、事業計画を苦しくする原因になることがあります。

 

確認① その物件で本当に事業ができるのか

 

まず確認したいのは非常に基本的なことです。

 

「その建物で、予定している介護事業が本当にできるのか」

 

ということです。

 

建物が広い。

家賃も手頃。

立地もいい。

 

だからといって、必ず介護事業に使えるとは限りません。

 

予定するサービスによって、求められる設備や面積、消防・建築・行政上の条件などは異なります。

 

既存建物であれば、

 

用途や構造。

必要な改修。

避難経路。

消防設備。

バリアフリーへの対応。

各スペースの面積や配置。

自治体や指定権者への確認。

 

など、事前に確認しておくことがあります。

 

ここで大切なのは、

 

「不動産会社が介護事業に使えると言ったから大丈夫」と考えないこと。

 

不動産会社は不動産の専門家です。

 

しかし、予定している介護サービスの指定要件や、自治体ごとの運用まで確認しているとは限りません。

 

契約する前に、行政、消防、建築関係者など、必要なところへ確認する。

 

そして、

 

「この物件で予定している事業ができる」

 

ことを確認してから話を進めることが大切です。

 

確認② 改修費まで含めても「安い物件」なのか

 

「家賃が安い」

 

という理由で魅力を感じる物件もあります。

 

しかし介護事業では、

 

家賃だけで物件コストを判断するのは危険です。

 

例えば、月々の家賃は安い。

 

でも、

 

大きな改修が必要。

消防設備の追加が必要。

トイレや浴室の工事が必要。

段差の解消が必要。

空調設備を入れ替える必要がある。

電気容量の変更が必要。

 

こうした費用を積み上げると、

 

「思っていたよりかなり高くなった」

 

ということがあります。

 

さらに、工事期間が長くなれば、その間の家賃が発生する可能性もあります。

 

つまり、

 

「家賃が安い物件=事業コストが低い物件」ではありません。

 

見るべきなのは、

 

契約時の費用。

 

改修費。

設備費。

工事期間中の費用。

開業後の家賃。

維持管理費。

原状回復などの契約条件。

 

こうした費用を含めた、

 

「この物件を使い続けるための総コスト」

 

です。

 

確認③ その家賃を「満室」で考えていないか

 

物件を検討するとき、

 

「この家賃なら払える」

 

という判断をすることがあります。

 

ここでも一つ質問してみてください。

 

「何%の稼働率を前提に、その家賃を払えると考えていますか?」

 

例えば、満床になれば十分利益が出る。

 

だからこの家賃でも問題ない。

 

一見、問題がないように思えます。

 

では、

 

開業直後はどうでしょうか。

 

入居率30%。

50%。

70%。

 

その段階でも家賃は同じです。

 

入居者が少ないからといって、家賃が半分になるわけではありません。

 

介護事業、特に施設系・住宅系の事業では、固定費が経営に大きく影響します。

 

だから、

 

「満室になれば払える家賃」ではなく、「満室になるまで耐えられる家賃か」

 

という視点が重要です。

 

確認④ その地域に、本当に利用者はいるのか

 

物件を見ると、

 

どうしても建物そのものに目が向きます。

 

しかし介護事業では、

 

建物の外を見ることも重要です。

 

その地域には、どのくらいの高齢者がいるのか。

どんな介護ニーズがあるのか。

競合事業所はいくつあるのか。

既存施設の稼働状況はどうなのか。

どの価格帯が選ばれているのか。

地域の医療機関や居宅介護支援事業所はどうなっているのか。

 

そして、

 

自分たちが提供しようとしているサービスに、本当にニーズがあるのか。

 

よくあるのが、

 

「高齢者が多い地域だから需要がある」

 

という考え方です。

 

もちろん、高齢者人口は重要な情報です。

 

しかし、高齢者が多いことと、自分たちのサービスが選ばれることは同じではありません。

 

重要なのは、

 

「誰に、何を、いくらで提供するのか」

 

が地域のニーズと合っていることです。

 

確認⑤ 利用者だけでなく「職員が集まる場所」なのか

 

介護事業の立地を考えるとき、利用者のことはよく検討されます。

 

しかし、もう一つ重要なのが、

 

職員の通勤です。

 

駅から遠い。

バスの本数が少ない。

夜勤明けに公共交通機関がない。

車通勤はできるが、職員用駐車場が少ない。

 

こうした条件は採用に影響することがあります。

 

介護事業は、人がいなければ運営できません。

 

どれだけ利用者ニーズがあっても、必要な職員を確保できなければサービスを提供できません。

 

そのため物件を見るときは、

 

「利用者が来やすいか」

 

だけではなく、

 

「ここで働く人が通いやすいか」

 

という視点も必要です。

 

実際に求人を出すことを想像してみてください。

 

「この場所で働きたい」

 

と思ってもらえるでしょうか。

 

これも立派な事業計画の一部です。

 

確認⑥ 図面上ではなく「実際の運営」を想像する

 

図面を見ると、必要なスペースが確保できている。

 

居室数も取れる。

事務所もある。

食堂もある。

 

それでも、

 

実際に人が動くと使いにくい建物

 

ということがあります。

 

例えば、

 

スタッフの移動距離が長い。

利用者の見守りがしにくい。

夜間の巡回に時間がかかる。

汚物やゴミの動線が生活空間と重なる。

厨房から食事を運びにくい。

物品を保管する場所が足りない。

事務所から利用者の様子が見えにくい。

 

こうしたことは、図面の数字だけでは分かりにくいものです。

 

そして、この小さな「使いにくさ」が毎日積み重なると、スタッフの負担になります。

 

スタッフの負担が増えれば、

 

残業。

人員配置。

離職。

採用。

最終的には人件費にも影響します。

 

つまり、

 

建物の動線は経営にもつながっている

 

ということです。

 

確認⑦ 「空室が多い物件」には理由がないか

 

長く空いている建物や、条件の良い物件が見つかることがあります。

 

もちろん、本当に良い掘り出し物かもしれません。

 

ただ私は、

 

「なぜ、この物件は空いているのだろう?」

 

という視点も持っておいた方が良いと思います。

 

アクセス。

周辺環境。

建物の使い勝手。

修繕。

過去の利用状況。

賃貸条件。

近隣との関係。

 

何か理由がある可能性もあります。

 

「安いから」

「広いから」

 

だけではなく、

 

安い理由、空いている理由まで確認する。

 

これは介護事業に限らず、事業用物件を選ぶときには大切な視点です。

 

確認⑧ 契約を急かされても、確認を飛ばさない

 

良い物件が見つかると、

 

「他にも検討している方がいます」

 

「今週中に決めてもらえれば」

 

と言われることがあります。

 

そこで焦ってしまう。

 

この気持ちはよく分かります。

 

しかし、

 

物件を逃すリスクと、間違った物件を契約するリスク。

 

介護事業では、私は後者の方が大きい場合があると思っています。

 

一度契約すれば、

 

保証金や敷金。

家賃。

工事費。

設備費。

採用費。

 

さまざまなお金が動き始めます。

 

そして、

 

「やっぱりこの物件では難しい」

 

と分かったときには、簡単には戻れないこともあります。

 

だからこそ、

 

「急いで決めること」と「必要な確認を省くこと」は別

 

だと考えてください。

 

良い物件だからこそ、冷静に確認する。

 

それが経営判断だと思います。

 

確認⑨ 契約条件を「開業できなかった場合」から見る

 

物件の契約では、

 

「ここで事業を始める」

 

という前提で契約書を読みます。

 

しかし、あえて逆からも見てみてください。

 

「もし予定どおり開業できなかったら?」

 

契約開始日はいつか。

工事期間中も家賃は発生するのか。

フリーレントはあるのか。

途中解約はどうなるのか。

原状回復はどこまで必要なのか。

契約期間はどうなっているのか。

必要な許認可や指定が取れなかった場合はどうなるのか。

 

介護事業では、物件契約から開業まで一定期間が必要になることがあります。

 

その期間も資金は出ていきます。

 

だから、

 

契約書も事業計画の一部

 

として見る必要があります。

 

確認⑩ その物件を「3年後」から見ても選びますか?

 

最後に、私はこんな見方もしてほしいと思っています。

 

今ではなく、

 

3年後の経営者になったつもりで、その物件を見る。

 

利用者が増えた。

スタッフも増えた。

運営も安定してきた。

 

そのとき、

 

この広さで足りるか。

逆に広すぎないか。

家賃は負担になっていないか。

スタッフの動線は問題ないか。

設備更新の費用はどうか。

この地域でさらに事業を伸ばせるか。

 

開業前は、

 

「とにかく始めたい」

 

という気持ちが強くなります。

 

でも物件は、開業した日だけ使うものではありません。

 

その後、何年も事業を支える経営資源です。

 

だからこそ、

 

「開業できる物件」

 

ではなく、

 

3年後もこの物件を選んで良かったと思えるか」

 

という視点を持ってみてください。

 

物件を決める前に「収支を入れ直す」

 

良さそうな物件が見つかったら、私はその条件を使って、もう一度収支計画を確認することをおすすめします。

 

例えば、

 

家賃。

共益費。

駐車場代。

改修費。

設備費。

借入額。

返済額。

必要な職員数。

想定する利用者数。

 

これらを実際の物件条件に置き換えてみる。

 

そして、

 

稼働率が50%ならどうなるか。

 

70%ならどうなるか。

 

想定より3か月遅れたらどうなるか。

 

ここまで見て初めて、

 

「この物件で事業が成立するか」

 

が見えてきます。

 

物件を見てから収支を合わせるのではありません。

 

収支に物件を入れて検証する。

 

この順番が重要です。

 

「良い物件を見つける」より「合わない物件を選ばない」

 

介護事業の物件探しでは、

 

「良い物件を見つけたい」

 

と考えます。

 

もちろん、それは大切です。

 

でも私は、それ以上に、

 

「事業に合わない物件を選ばない」

 

ことが重要だと思っています。

 

100点の物件を探し続ける必要はありません。

 

立地。

家賃。

設備。

動線。

採用。

利用者ニーズ。

収支。

 

すべてが完璧な物件は、なかなかありません。

 

大切なのは、

 

「何を妥協できて、何を妥協してはいけないのか」

 

を事業計画の段階で決めておくことです。

 

そうすれば、

 

「きれいだから」

「安いから」

「今決めないとなくなるから」

 

という理由だけで判断しにくくなります。

 

物件選びも「事業計画」です

 

ここまで読むと、

 

「物件選びって、こんなに考えることがあるのか」

 

と思われるかもしれません。

 

でも、これは物件の話だけではありません。

 

家賃は収支につながります。

立地は利用者獲得につながります。

交通アクセスは採用につながります。

建物の動線は人員配置や生産性につながります。

改修費は資金計画につながります。

契約時期は運転資金につながります。

 

つまり、

 

物件選びは、事業計画そのもの

 

なのです。

 

だから私は、物件を単独で判断するのではなく、

 

事業計画・資金計画・人材計画・運営計画とセット

 

で考えることが重要だと思っています。

 

契約する前に、もう一度確認してみてください

 

介護事業の物件を検討している方は、契約する前に次のことを確認してみてください。

 

・予定している介護事業を本当に行える物件か

・行政、消防、建築上の確認はできているか

・必要な改修工事と費用は把握しているか

・家賃以外を含めた総コストはいくらか

・入居や利用者獲得が遅れても家賃を払えるか

・地域に自分たちのサービスへのニーズがあるか

・競合状況を確認しているか

・スタッフを採用しやすい立地か

・実際の業務動線に無理はないか

・契約条件を理解しているか

・開業が遅れた場合の資金を考えているか

3年後も使い続けられる物件か

 

そして最後に、もう一つ。

 

「この物件があるから、この事業を始めようとしていないか?」

 

です。

 

ここは一度、自分自身に問いかけてみてください。

 

最後に

 

良い物件が見つかると、どうしても早く決めたくなります。

 

特に介護事業の立ち上げ準備を進めていると、物件が決まることで一気に事業が前へ進むように感じます。

 

しかし、

 

物件が決まることと、事業が成功に近づくことは同じではありません。

 

物件は、介護事業の大きな固定費であり、利用者の生活の場であり、スタッフの職場でもあります。

 

そして一度決めると、簡単には変えられません。

 

だからこそ、

 

「良い物件だから契約する」

 

ではなく、

 

「この事業を続けるために、この物件でいいのか」

 

という視点で考えてほしいと思います。

 

家賃だけを見るのではなく、収支を見る。

建物だけを見るのではなく、地域を見る。

利用者だけを見るのではなく、そこで働くスタッフを見る。

開業日だけを見るのではなく、3年後を見る。

 

そこまで考えて物件を選ぶことが、介護事業を長く続けるための土台になります。

 

もし今、

 

「候補物件が見つかった」

「契約するか迷っている」

「この家賃で事業が成り立つのか不安」

「改修費まで含めた資金計画を確認したい」

「この地域で本当に利用者が集まるのか判断できない」

 

という状況でしたら、

 

契約する前に、一度事業計画全体から物件を見直してみることをおすすめします。

 

物件を決めてから、

 

「どうやって事業を成立させよう」

 

と考えるのではなく、

 

事業を続けるために、どんな物件が必要なのかを考える。

 

順番が変わるだけで、見えるものも変わります。

 

B&T Laboでは、物件だけを見るのではなく、事業計画・資金計画・人材計画・運営体制まで含め、

 

「この事業を無理なく続けられるか」

 

という視点から介護事業の立ち上げを一緒に整理しています。

 

物件契約は、大きな一歩です。

 

だからこそ、その一歩を踏み出す前に、

 

「この物件で、本当に大丈夫か?」

 

一度確認してみてください。

 

事業は、始めることより続けること。

 

B&T Labo

介護事業の立ち上げ・事業設計・経営相談

 

 

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